弁護士,司法書士,行政書士,税理士による相続相談ポータル
前回、「被相続人の方が自動車を所有していた場合にすべき手続」の記事を掲載しましたが、今回は、被相続人の方が「ローン」で自動車を所有していた場合です。正確にいうと、ローンで自動車を「購入」されていた場合といった方が良いでしょうね。
最近では、ディーラーが定めている「残価設定」という方法により、自動車をローンで購入しやすくなっていますよね。車体価格のいくらかを据え置くことで、月々の支払いが安く済むというもので、今までよりも自動車を購入しやすくなっています。
このような後押しもあり、多くの方がローンで自動車を購入なさっていることと思います。そこで、以下では、今回のテーマの内容について具体的に述べていきます。
まず、被相続人の方がローンで自動車を購入されていた場合に確認していただきたいことがあります。それは、被相続人が乗られていた車の「車検証(自動車検査証)」です。
車検証を見ると、「所有者」「使用者」が記載されている部分があります。自動車をローンで購入されていた場合には、この所有者の部分に、ローン会社や自動車ディーラーの名前が記載されています。これを法律用語で「所有権留保」と呼びます。
自動車の所有権をローン会社が持ったまま、自動車を他の人が使用することを認めますよ、というものです。
この所有者の部分に被相続人の方の名前が記載されている場合には、そもそも自動車をローンで買っていないか、あるいはローンで購入したが、既にローンを完済し、ローン会社名義から被相続人の方へと名義変更を行ったということです。
では、所有者の部分にローン会社やディーラーの名前がある場合についてです。自動車の所有者を、ローン会社等から相続人に変更するにはローン会社等の協力が必要です。
具体的には、譲渡証明書という書類に押印をしていただく必要があります。もちろん、譲渡証明書に押印するということは、「この車を譲りますよ」という意思表示になりますので、ローン会社としては、ローンの残債を払ってくれなければ押印してくれることはありません。つまり、ローンの残債を全て支払うことで、名義の変更が可能となります。
しかし、場合によってはローンの残額が高額でとても支払えない、あるいは分割等でも支払っていきたくないという場合もあると思います。そこで、被相続人がローンで購入していた車を、相続人が乗り続けたい場合と、乗らずに処分したい場合に分けてご説明します。
この場合には、以下の2つのパターンとなります。
どちらが良いかは、相続人の方のお考え次第ですので、ローン会社や自動車ディーラーと相談して決められると良いでしょう。
実は、この場合が少し難しいです。例えば、自動車のローンが高額で、他に少し現金預金等の財産があるといった場合に、自動車だけは相続放棄して、少しの現金預金だけを相続しますという選択は出来ないのです。
ですので、現金預金等を受け取りたい場合には高額なローンも相続しなければならず、高額なローンを相続放棄するには現金預金等も相続放棄しなければなりません。
ここは、自動車のローン残高と、他の相続財産との計算を行った上で判断される方が良いでしょう。しかし、場合によっては、自動車の売却価格とローンの残債を比べた時に、自動車の売却価格の方が高いということもあり得ます。この場合は、一時的にローンの残債を全て支払ったとしても得をすることもあります。
さて、ここまでの話で、被相続人の方がローンで購入していた自動車を相続人の方が乗り続ける場合には、ある程度ローン会社等との話し合いが必要なことがお分かりだと思います。ローン会社や自動車ディーラーの承諾がなければ、相続人名義に変更することは出来ないので、自動車を相続されたい場合には、一度相談されてみてください。
なお、自動車を引き継ぐことが決まった場合には、前回の記事である「被相続人の方が自動車を所有していた場合」と同様の手続きとなります。
ローンで自動車を購入され、ローンが残っている場合には、少し手続きが煩雑です。しかし、ローンで購入された自動車をそのままにしておくのは、ローンだけを支払い続けることにつながっていきますので、必ずお手続きをするようにして下さい。
また、名義変更手続が完了した後は、前回の記事でも書いているとおり、保険の手続き等も忘れないようにして下さいね。
相続コラム・ガイド
2020.06.29 11:20